作者ノート③なるべくズレていない言葉を
劇団のYouTubeアカウントで「YouTubeラジオ」という番組をやっています。
その名の通り、ラジオ形式で僕があれこれ喋るだけという内容です。
先日、最新版(といっても8ヶ月ぶりですが……)を公開しました。
『コスモス揺れて、嘘ひとつ』の推しポイントを語ります、というテーマです。
とはいえ、僕は照れ屋なので、自作を、しかも観に来てもらえるように語るというのは苦手なので、Gemini Notebookに読ませて考えてもらいました。
下記がGeminiくんが考えてくれた推しポイントです。
推しポイント①「全員、ちょっとずつ嘘をついている」人間臭すぎるキャラクターたち。
推しポイント②SNSや地域活性化の「エモい物語(ナラティブ)」の裏側をえぐる現代性
推しポイント③掛け合いのみで駆動する会話劇だが、同時に町全体の大きなうねり(町おこしの光と影、そして崩壊と再生)を描くダイナミズム。
……ちょっとね、こそばゆくなります。
①はまあいいんですが、②はね……現代性はあると思います。ポイントで挙げてくれたようにSNSやエモい物語を使った町おこしを題材にしていますし、肯定的な部分も批判的な部分も描いている。
ですから「裏側」というのもOKですね。ただ「えぐる」というのが……なんでしょう、深く突っ込んではいるけど、えぐるかなあ、とか思ってしまいます。ちょっと言葉の使い方が大げさじゃないかなあ、と。
そして③は後半部分、「大きなうねり(町おこしの光と影、そして崩壊と再生)を描くダイナミズム」これがね、やっぱり大げさじゃないかなあ……
今作は「喫茶と余白」というカフェを舞台にした会話劇です。
カフェの中で語られる会話は登場人物たちのごく小さな会話です。
「これは町のためにやりようとよ」くらいの話はでてきますが、市井の人々が交わす言葉で、なにも政治家や官僚が語るような、町のことを本格的に議論するような言葉ではありません。
今日のごはんをどうするか、明日をどう生きるか、という非常に小さな、ミニマムな会話なのです。
ただ、ミニマムな会話を通してちょっとだけその奥にある町のこと、マクロなことも想像できるようには構成している。
ですので、Geminiくんが言うことはあながち間違っているというわけではありませんが……やや、大げさなのです。
まあね、僕がGeminiくんに与えた指示は
「宣伝したいので、推しポイントを考えてください」
だったんですよね。
Geminiくんは「そうか、宣伝か。ならば観に来たくなるような言葉が必要だぞ」と考えた……のかもしれません。いや、彼が何を考えていたのか僕にはわからない。
しかし、宣伝となれば興味を引くためにちょっとだけ盛るんじゃないでしょうか。
今作のキャッチコピーは
「嘘じゃない。盛っただけです。」
です。
これは僕ら作り手にとっても切っても切り離せない問題です。
ともすれば、僕らも盛ってしまう。じゃあ、それは嘘なのか?というと、あながち間違ってはいない。間違ってはいないが、それがジャストな言葉なのか、ということなのです。
「お腹がすいた」とか「ねむい」とか、シンプルなことなら問題ないかもしれません。
ですが、ちょっと複雑な自分の気持ちや意見を表明する時、いかがでしょう?自分が思っていること、考えていることを100%完全に表現できていますか?
僕は全然できていません。こうやって文章を考えていても、言葉を書けば書くほど頭の中で考えていたこととはちょっと違うような気がする。
だから何度も書き直し、何度も作者ノートを書き、自分が何を考えているのかを可視化しようとする。
芝居のように、見る人によって色んな捉え方ができるようなものを言葉で説明するのは至難の技です。
そしてそこに「みんなに観に来てもらいたい。すごそうと思ってもらいたい」などの意図が入ってくると余計にこんがらがってきます。
結局は何を大事にするか、という話になってきますよね。
僕は見栄っ張りだし、非常に俗物的な人間なので(笑)、すぐに盛ります。
ただ、そのたびに考えるのです。「おいおい、それは盛りすぎじゃないか」と。確かにみんなに観に来てもらいたいし、すごいと思われたい。でも、本当にそれでいいのか?と。
言葉にした時点でどうしたって自分が考えていること、感じていることからズレてしまう。
でも、なるべくズレていない言葉を選びたいのです。